「さびは、見た目の美しさについての言葉です。経年変化によって、周りの建物など身の回りの物が、さびれたり、汚れたり、欠けたりします。一般的には劣化とみなされますが、逆に、その変化が織りなす多様で独特な美しさをさびといいます。
一方、わびは、さびれや汚れを受け入れ、楽しもうとするポジティブな心についての言葉です。つまり、さびの美しさを見出す心がわびなんです」
さびが表面的な美しさだとすれば、わびは内面的な豊かさ。両者は表裏一体の価値観だからこそ、わび・さびと、よくセットで語られるのだそうです。
海外では「Wabi‐Sabi」で通じる日本独特の概念です。
日常としてのわび・さび
寺社仏閣など古い建築物になると、木造部分の装飾に痛みや、銅製のものにできる青緑色の錆びなどがあります。それを表現する時に、「この静けさに包まれた寺院は、華やかな装飾こそないものの、侘び寂びの趣を感じる」などと言われます。
また、石の蹲(つくばい)に生えたコケを見た時に、緑の美しさはもちろん、それが育つまでの時間にまで思いが巡ります。そして、石の何十年経っても変化しにくい特性から、安定感を覚えます。そういった場合に、「この蹲(つくばい)からは侘び寂びを感じ、見ていると心が落ち着く」などと表現されていると思います。
飾り気がなく慎ましい様子は現代日本でも美しいと考えられており、わびさびは日本人の価値観に大きな影響を与えているといえます。
傷一つなかったり完全に整っていたりする様子は、歴史やそれ以上の成長を想像させませんが、不完全であるからこそ、複雑さや味わいを感じさせるのです。
また、侘びは、古くは日本最古の歌集『万葉集』にも使われており、室町時代には、質素な茶道具を使い静寂さを重んじる「侘び茶(わびちゃ)」という茶道の楽しみ方も生まれました。
侘び茶の第一人者である千利休(せんのりきゅう)は、茶道とともに侘びの概念を普及させ、人々に新たな美意識を浸透させていったともいわれている様です。
わびさびの魅力はなぜ人気なのか?
わび・さびとは不完全や簡素の中にある美しさを見出す日本人の美的感受性を認める言葉です。
「侘び寂び」に象徴される日本の美は、質素さや閑寂さ、非対称や余白を重んじます。 こうした「侘び寂び」の美意識は、禅や茶の湯、絵画や庭園、美術工芸品など、日本文化と日本人の価値観に大きな影響を与えていると言われています。
「侘(わび)」は、「つつましく簡素なものの優美」を意味する。「寂(さび)」は、「時間の経過とそれに伴う劣化」を意味する。この2つが組み合わさり、日本文化に極めて重要な、独自の感覚が作られたのです。
仕事に追われ、また人間関係に悩んでいる時など静かな空間を味わえるため、わびさびを求めて訪れる方が多い様です。とても嬉しいですね。確かに凄く落ち着きます!
<豆知識>
侘び寂びも、元々は美意識を表す言葉ではなく、否定的な事を表す言葉でした。しかしその言葉の中に、質素で静かな物を美しいと感じる日本人の美意識が表現されるようになり、肯定的な言葉に変化しました。他の古くからの日本行事や伝統芸能にも、侘び寂びの美意識は広く取り入れられており、見た目の豪華さではなく、精神的な静寂を好む日本人の感性が見て取れます。
にほんブログ村